日本では全国的に空き家が増えており、増加数や活用方法などの問題がテレビ・新聞で取り上げられていることはご存じでしょうか。
空き家は解体して更地にして新しい家になることが多々ありますが、あるがままをできる限り活かしてシェアハウスなどに生まれ変わる事例も増えています。
今回紹介する浅川さんのシェアハウスも元は空き家だった建物であり、空き家再生を手がける中お住まいの近隣で中古戸建を見つけたのが最初の出会いです。
今回は浅川さんが空き家再生やシェアハウス運営を始めた理由、シェアハウスを始めるにあたって大切にしたいことなど、詳しくお伺いしました。
浅川さんのシェアハウス「メリシェアハウス@Hasama」について、詳しくは以下のページをご覧ください。
→シェアハウスひだまり「メリシェアハウス@Hasama」はこちら!
お子さん3人を育てた後に空き家再生にチャレンジする浅川さん
ー自己紹介をお願いします。
浅川です。出身は函館で、3歳頃に千葉に引っ越しました。結婚前は都内で働いていたことから東京に住んでいましたが、高校の同級生である主人と結婚し、お互いの地元・千葉の船橋に住み始めました。それから現在まで千葉県民です。
ーご結婚前はどんな仕事をされていましたか?
外資系の金融機関で決済などを行うバックオフィスシステム部門の統括を担当し、最大で60人ほどのチームを率いていました。ロンドンに本社がある外資系企業だったため、時差があるゆえに夜が遅い毎日でしたね。
結婚してから2年ほどは夫婦ふたりだけの生活でしたが、子どもが3人生まれてその都度産休を取りました。
復帰後は主人が国家公務員で忙しい上に、昔は在宅ワークの概念がありません。どんな悪天候の日でもベビーカーを押して送り迎えをして、ときには実家の親を頼ったりベビーシッターさんにお願いしたりして保育園時代を乗り切りました。
その後もいろいろなことがありながら、25年間仕事と子育てに明け暮れました。
子どもを育てながら働くのは大変だったものの、船橋は近くに保育園や小学校があって子育てしやすい環境だと感じていました。
ーお子さんはもう独立されたんですか?
一番下の次女が1月に成人式をしたところ、長女は23歳でこの春就職します。長男は28歳で、自分で事業をしています。
主人が国家公務員を早く退職して相続専門の税理士として独立するなど仕事の話が大好きでしたし、共働きのため夫婦で仕事の話をすることが多い毎日でした。
その話をずっと聞いて育ったためか、子どもたちも仕事が好きなようでバイトなり仕事なり楽しんでいますね。そういう環境もあって長男は独立を選んだのかもしれません。
ーすごいですね。
主人は「今日行ったのはこんなところで……」という1日の話から始まって、もちろんお客さんの個人情報は話せませんが、人がどのようなときに不動産を手放すのか、どういう風に空き家が再利用されるのかなど、いろいろな話をしてくれました。
また他の家族からは部活や受験、旅行の話や他愛のない笑い話など、食卓でお互いに知らない世界を垣間見ることができる環境がありましたね。
空き家再生やシェアハウス運営への興味は夫の話とコロナによる在宅ワークから
ー浅川さんは空き家再生を手掛けていますよね。空き家の活用に興味が湧いたのは、旦那さんの影響ですか?
影響はありますが、そもそも二人で築いてきたライフスタイルも大きく関係しています。
結婚してしばらくしてから新築の家を建てましたが、子供が増えて手狭になり、引っ越し先として近隣の空き家住宅をいくつも見て回りました。新築は資産形成上リスクが高いし、そもそも新しいものより古いものを大切に使うということがしたくなったんです。
そのとき見つけた築30年の家を全面的にリノベーションして古い梁を活かし、クライミングウォールや上り棒、薪ストーブなどを盛り込んで、住んでいて楽しくてくつろげる家を作りました。
その空き家を活かす楽しさが忘れられなかったんです。夫もその楽しさがあって、退職しても相続にかかわる仕事を続けたんだと思います。
さらに船橋でも空き家をたくさん見かける上に、通っていた社会貢献型空き家オーナー塾で全国に何百万戸の空き家があるという状況を知って、まだまだこれからできることがあると感じました。
日本の木造の家は長くもたないイメージがある上に、確かに欧米のレンガ造りの家などに比べると耐久性は低いかもしれません。そのため更地にして新しい家を建てることがよくありますが、新築の家には多くのコストがかかります。
日本の古民家などよく見ると100年を超えて使われている家もあるように、その良さを見極めて活かすことができれば環境にもお財布にも優しいモデルができ上がります。
しっかりとした造りで定期的に手入れをすれば住めるのに、知らないからとゴミのように扱って更地にするのはもったいない。もちろん更地にした方が良い空き家もありますが、その選択までを自分の目で見極められるようになりたいと思いました。
さらに自分自身、新しいものをどんどん買うよりは古いものを大切に使い続けるのが好きです。空き家ビジネスは古いものを活用するという点で、私の性格にすごく合うと感じました。
ーメリシェアハウスも元は空き家だったんですよね。
そうです。もともと買うつもりはありませんでしたが、歩いているときに電信柱のビラを見て、勉強も兼ねて見学に行きました。入った瞬間気に入って、買わなきゃ!と感じたんです。
私は空き家オーナー塾で勉強していたため、買おうとしている物件の価値や経年劣化によるインフラに関するチェックなど、適切なアドバイスを受けながら良い空き家を手に入れることができたものの、アドバイスがなかったら買えなかったと思います。
あとは偶然見つけられた運、自分の決断力が味方してくれたことも大きかったと思います。普段、家族の中ではボケ担当になっていますが、その気になればできる!と思いました(笑)。
ーシェアハウスを知ったきっかけは何ですか?
勉強で通っていた空き家オーナー塾で知りました。
先生が不動産経営ということを軸に、資産形成や空き家再生など幅広く教えてくれる上に、ご自身もいくつものシェアハウスを手がけていたり他の塾生さんの事例も見聞きしたりしていました。
そこから自分はシェアハウスに暮らしたことがないから、どんな感じなんだろうと興味を持ちましたね。
あとはコロナをきっかけに都内から人が流れていて、郊外でも安くて広い住まいを選ぶ人が増えたと聞きました。人によってはテレワークが増えて、どんな場所でも仕事をしやすくなったからですよね。
私のチームでもコロナが始まってすぐ、会社でしかできない業務担当の人は出社、あとの人は在宅ワークという体制を敷いたんです。
在宅ワークの方が良いと思っていましたが、在宅ワークをしていた人からの「長い間1人で働いていたら頭がおかしくなりそう」「私は会社に行きたい」という声がきっかけで、在宅が向いている人と向いていない人がいることに気付きました。
会社に行きたいと言ってくれた人は、一人暮らしで家族にも会えない中、仕事もずっと自宅で孤独に悩んでいたそうです。
その一方で出社するグループの中には、コロナの影響で学校や保育園が閉まって毎日のリズムが不安定になってしまった子育て中の人もいました。
当たり前なのですが何が良くて何が合わないかは、その人のその時の状況次第だとあらためて感じた出来事でした。
シェアハウスもコロナが怖くて人と一緒に暮らせないという考え方もあれば、家族ほどではないけれど同じ屋根の下でいざとなったら助け合える関係性が良いという意見もある。
共同生活でリスクは抱えながらもそのリスクを管理することで、1人での在宅ワークが辛い人の寂しさを和らげるなど、誰かの役に立てるかなと思いました。
ー大事なことですね。
シェアメイトとの関係性や心構えは夫婦や親子、兄弟間でも同じです。
キッチンなどで次の人が使うことを考えて元に戻すなど、家族との生活でも他人への配慮は必要です。家族間でも習慣やベースが身に付いていることがほとんどだから、他人との共同生活でも配慮できるのではないかと。
お部屋の中が少し散らかっていても、共有スペースで気を付けられるなら十分。いろいろな暮らし方を許せるのがシェアハウスの魅力だと考えています。
また主人は3年前に亡くなり、子どもたちもその内実家を出ていくと思います。そのとき私も一人になったら、今の自宅をシェアハウスにすることも含めて自分自身がシェアハウスに住むという選択肢もあるのかなと考えています。
シェアハウスの魅力と周辺環境
ー浅川さんはシェアハウスの近くに住まれていますが、船橋周辺の魅力はありますか?
最寄り駅の新京成線はマイナーですが、実はおもしろい場所です。アンデルセン公園のような人気スポットもある一方で、あまり知られていないけれど地元の人は知っている穴場スポットもあるんです。
駅周辺にはパン屋さんやカフェなど、おいしいお店がたくさん並んでいます。いちょう並木もあり、ほっこりしたい人には最適な場所です。
ーシェアハウスの一部をレンタルスペースとして活用予定なんですよね?
利用する方には専用玄関から入ってもらい、広々としたリビング兼シアタールームを個人レッスンやお茶会、セミナー、子供会などに活用してもらえたらと考えています。コロナの状況を見ながら人数制限をするなど、感染対策も整えた上で利用できるようにしています。
またこちらは天井が高いから楽器の練習もできます。
私は趣味でバイオリンを弾いており練習としてここで弾いてみたことがあるのですが、扉を2つ閉めると音はほとんど漏れていませんでした。残響があって、木の響きがとても気持ち良いかもしれないですね。
ー予約は必要ですが、楽器可のシェアハウスになるんですね。めずらしい特徴になりそうです。
→楽器可のシェアハウス「メリシェアハウス@Hasama」はこちら!
シェアハウス運営を始めるにあたっての不安
ー実際にシェアハウスを始めますが、何か不安はありますか?
ウマが合わない、生活スタイルが合わない場合にどうしようと不安はあります。こういう家に住みたいとか感覚が似ている人が集まるのが良いかなと考えていますが、実現するかは分からない。
ただ若い世代は、対人スキルの高い人が多いと感じるんです。
今は多様性を尊重する時代、職業観・恋愛観などさまざまなスタイルがあることを、みなさん肌感覚で知っているんですよね。
対して私のように昭和の頃からバリバリ働いていた人は、気づかない内に「普通はこうあるべきもの」といった偏見を持っていることがあります。
柔軟なライフスタイルへの理解や見方は若い人から吸収する必要があるし、コロナでまた世間の価値観が変わったら適応しないといけない。
特に家族の生活習慣は自分たちにとっては当たり前でも、よそから見るとなぜ?と思うものもあります。
他人と生活することで客観視し気づきも得られるはずで、それがシェアハウスの醍醐味でもあるのかなと感じます。
シェアハウスにもさまざまな視点が持ち込まれます。
例えば一緒に料理をしてみたら手順が違うかもしれないけれど、ダメな訳ではありません。楽しいことであり、シェアハウスでなければ味わえない経験です。
そのような違いは楽しみたいですね。
空き家を活用するシェアハウス運営で大切にしたいこと
ーシェアハウスを始めるにあたって、大切にしたいことはありますか?
気持ちよく住むのが大切なため、適度に「これをしたら自分以外の人がどう思うのかな?」と考えながら生活してもらえるとうれしいです。気遣いの気持ちさえあれば大抵のことは大丈夫かなと思います。
ーシェアハウスに住んでいる人とはどう関わっていきたいですか?
入居者さん次第ですが、探りながら適切な距離感を見つけたいです。
オーナーがウロウロしていると窮屈に感じる人もいるので頻繁には避けますが、一緒に食事する機会があっても良いですし、できることがあればいつでも力になりたいです。
ーコミュニケーションの機会はあると良いですよね。
若い人と話すと学びが多いと感じるんです。仕事で出会う人は世代・属性が似ている上に、頻繁に人が入れ替わる訳でもありません。不動産を始めて若い方と話すことが増えて、勉強の日々です。
反対に若い頃はこれからのキャリアなど悩むこともあるかと思います。幅広い世代と交流があると楽しいし、視野が広がることもあるはず。
何かサポートが必要なときはヘルプと言ってもらえれば、聞きたいです。私も近所なので、息子にプレゼントしてもらった自転車で向かいます(笑)。
ー心強いですね(笑)。
何より30年も仕事と家庭を切り盛りしてきたため、少しは役に立つこともあるのではないかと思います。
シェアハウスに住んでほしいのは’’しなやかな人’’
ーでは最後に、シェアハウスにはどんな人が住んでほしいですか?
仕事にしろ趣味にしろ、楽しんでいる人がいるとおもしろいのかなと思います。
あとはしなやかな人。楽しいときもあれば疲れるときもあるし、どこに行けば和らぐのか分からないこともあります。シェアハウスに住む中で悩みや不安を聞くのが上手い人がいると、煮詰めていた気持ちが晴れるのかなと感じますね。
コロナの影響により在宅ワークをされる方が増えましたが、かつての私の部下のように環境や働き方が変わって辛い気持ちを抱えるのも分かる。そのとき少しでも話せる相手がいることは大きいと思います。
ー確かにそうですね。では、最後にひと言お願いします。
以前オーナーさんが住んでいた空き家とはいえ、シェアハウスとして活用したことはありません。
そのためまずは実際に住んでくださっている方からフィードバックをいただいて、できるところは少しずつ良くしていきたいですね。
難しいこともあるだろうけれど、みなさんのお力を借りながら乗り越えていきたいです。
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まとめ 多様な価値観が交わる中で理想のライフスタイルを作り上げられるシェアハウス
ご主人の話や偶然の出会いから空き家再生に興味を持ち、手にした空き家をシェアハウスとして貸し出すことに決めた浅川さん。
古いものを大切にするのと同じように、いまの状態や気持ちを大切にしながら住むことで自分の素直な願望に気付き、心の底から楽しめるライフスタイルを見つけられそうだと感じました。
周辺のほっこりした雰囲気も相まって、シェアハウスへの入居が自分を見つめ直す機会にもなるかもしれません。
いま煮詰まっている人はもちろん、過去に悩んだ経験がある、気持ちが分かるという方にもおすすめのシェアハウスです。
気になった方は、お気軽にお問い合わせください。
→シェアハウスひだまり「メリシェアハウス@Hasama」はこちら!
空き家を活用したいオーナー様はこちらの記事もご参照ください。