
都心へのアクセスが良好ながら、落ち着いた住環境が魅力の埼玉・川口市。そんな場所に「単なる部屋の貸し借りではなく、なにか目標を持って頑張る人を応援する場にしたい」という温かい思いから、新たなシェアハウスが誕生しました。
シェアホストである白坂さん一家は、現役で大学教員を務める父・康俊さん、フランスの伝統工芸の教室を運営する母・和代さん、そしてオーストラリア留学経験があり英語が堪能な息子・タツロウさんと、非常に多才。さらに康俊さんと和代さんは、普段は群馬と青森を行ったり来たりしているというユニークぶり。
そんな白坂さん一家が、幼少期から住んだ思い出の家をシェアハウスとして開放する決意をしました。その決断の裏にはどんな思いがあったのか、思い出のある家を今後どのような場所にしていきたいのか。詳しくお聞きしました。
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青森と群馬で2拠点生活をする白坂さん夫婦と、留学経験のある息子さん
ー自己紹介をお願いします。では、康俊さんから。
:白坂康俊(しらさか やすとし)です。現在、74歳。
現役の大学教員で、現在は群馬県の高崎にある群馬パース大学で教えています。
ー何を教えているんですか?
:リハビリテーション学部言語聴覚学科で、言語聴覚士になるのに必要な知識を教えています。元々私も病院で言語聴覚士として勤めており、50代後半の頃に声をかけられて大学教員になりました。
ー言語聴覚士とは、どういうお仕事なんですか?
:言葉によるコミュニケーションに困難を抱える人を支援する仕事ですね。
身体に障害のある方を対象とする作業療法士とは異なり、言語聴覚士は病気や発達上の問題によって話すことに困難を抱えている人を対象に、コミュニケーション(話すこと)のための訓練や支援を行います。最近は高齢者向けに食べること(嚥下障害)の支援をすることもありますね(※)。
※…食べ物をうまく飲み込めず肺に入って引き起こる「誤嚥性肺炎」が高齢者に多く、高齢者施設や病院では、言語聴覚士(ST)を置かないと成り立たないような状況になってきていることから、近年特に需要が高まっているそうです。
ー言語聴覚士として50代まで働き、大学の教員になられたんですよね。そのときから群馬の大学ですか?
:最初は青森県・弘前にある大学で働き、その後福井県に行って、そして現在勤めている群馬の大学に来ました。
ー青森と二拠点生活をされているのは、青森で働いていたからなんですね。どのように行き来されているんですか?
:授業がある月曜日から木曜日までは群馬で生活し、木曜日の夜に青森・弘前に帰って週末を過ごします。そして、月曜日の朝にまた群馬に移動しています。
ー群馬と弘前、そしてこの埼玉・川口市のシェアハウスと、3拠点生活とも言えますね。
:時々、朝起きたときに自分がどこにいるのかわからなくなります(笑)。トイレに起きたときも「あれ、どっちだっけ?」と。
ー頭の整理が必要になりますね(笑)。では、次は和代さんお願いします。
:白坂和代(しらさか かずよ)、71歳です。私も普段は青森の弘前に住みながら、定期的に群馬に帰る生活をしています。青森では「カルトナージュ」という、フランスの伝統工芸の教室を運営しています。これは14年くらい続けていますね。
フランス語で厚紙を意味する「カルト」から来ている、厚紙に壁紙などを貼って作る伝統工芸。和代さんはカルトナージュ講師の資格を取得されています
ー14年も! 関東に帰ってくるのはどういうタイミングなんですか?
:趣味でやっている声楽のレッスンです。私は月に一回帰ってきますね。
ー声楽もやられているんですね。みなさん多才ですごいです。では、次はタツロウさんお願いします。
:息子のタツロウ、34歳です。普段はレジの周辺機器を扱う会社に勤めています。職場が西川口にあり、アクセスが良いこともあって、ここ川口の家に住まわせてもらっていました。
タツロウさんはオーストラリア留学の経験があり、英語も堪能とのこと
ー地元がここ、川口なんですよね。ご両親が弘前で生活している間は、タツロウさんが川口の家で生活・管理しているんですか?
:そうですね。ただ冬場は向こうが寒いので、両親が3か月ほどこっちに来ることもあります。
ーなるほど。確か、写真が趣味なんですよね? このシェアハウスの写真、タツロウさんが撮られたと聞きました。
:はい、今回の部屋の写真など撮らせてもらいました。
ーすごく良い写真でしたね。家の雰囲気がわかる、素敵な写真でした。
3世代で住んでいた地元・川口の家をシェアハウスにする理由
ー康俊さんは、地元がここ川口だったんですよね。
:はい、私は3歳から川口にいます。一時期、所沢の病院に勤めていた頃はその官舎に入ったりもしましたが、川口に戻ってからは子どもが生まれていたこともあり、三世代でこの家に住んでいました。
1階に両親、2階に私たち、3階に3人の子どもたち。二世帯住宅のような感じでしたね。
ーその後大学の仕事で弘前に引っ越しをされて、そこからこの家をシェアハウスにしようと思ったのは何かきっかけがあったんですか?
:子どもが独立したことが大きいですね。両親が亡くなり、子どもたちもタツロウ以外は外に出て、7人で住んでいたところに3人で住むのは広すぎるな、と。老後のことも考えて最初はケアハウスを考えていましたが、シェアハウスが候補に上がり、いろいろと調べ始めました。
ーなるほど。その中で私たちひだまりも見つけてくださったんですね。
:そうですね。ひだまりさんを始め、シェアハウスはコミュニケーションが生まれるところが良いなと思いました。ただの部屋の貸し借りであるアパートとはまた違う。いまはやっていませんが、私自身が剣道、奥さんは歌やカルトナージュと多趣味だし、そういう暮らし方のほうが何かと交流が生まれるのではないかと。
あとは言語聴覚士のような医療系の人を応援したいという気持ちもあって、シェアハウスが候補に上がりました。
ー和代さんとタツロウさんは、シェアハウスの話を聞いて最初どう思いましたか?
:実は、私はあまり賛成という感じではありませんでした。やっぱり他人との生活っていろいろあります。音やゴミの問題はよく聞くし、コミュニケーションがうまくいかなくて喧嘩するかもしれない。私は年を取っていることもあってゆっくり過ごしたいから(笑)そういうことが煩わしい気がして、乗り気ではありませんでした。
ーその不安は、シェアハウスの運営が決まった今もありますか?
:そうですね。テレビでたまにシェアハウスの番組を見ますが、若い人が中心ですよね。たまに高齢者の方が一緒に住んでいるところもあって、こういう形もあるのかなとは感じますが、考え方の違いがあるとどうなるのかな?と。
ーそこは入居者の良し悪しや相性もあり、難しいところではありますよね。
:年齢が上がると良かれと思って押し付けちゃったり、若い人には受け入れられなかったりするので、同年代のほうが良いのかなと思います。あとは物件によっては入退去のサイクルが短いと聞いたので、そのあたりもどうなのか、まだイメージが湧いていないのが正直な思いです。
ー確かにサイクルは賃貸に比べると早いですね。でも、相性が悪い人が入居してもその生活が永遠に続く訳ではないので、ある意味メリットとして捉えることもできます。タツロウさんはどうですか?
:僕はオーストラリア留学の際にシェアハウスの経験があったので、特に偏見はありませんでした。海外では一般的な選択肢なので、割とよくあることです。
:僕は偶然にも日本人だけのシェアハウスに住んでいたこともあり、特にトラブルなく過ごせたんですよね。日本人同士だからわかる、一般常識や暗黙の了解がわかっていたからかもしれませんが……。
でも、その経験があったからこそシェアハウスに特に不安や偏見はなく「それを日本でやってみたらどうなるのか?」「海外の方も混ざるとどうなるんだろう?」と、純粋な興味がある。割とポジティブですね。
川口は鋳物の町! いまは都内に近くて物価も安い、人気のエリア
ー長く住んでいる白坂さんだからこそわかる、川口の特徴やシェアハウス周辺の特徴について教えてください。
:この周辺は住宅街で静かですが、東口は商業地帯なので利便性が高いです。人も多いし、割となんでも揃います。
:こっちに帰ってくるとほっとしますよね。人混みがないから。
ーなんだか落ち着いた雰囲気がありますよね。
:川口は元々古い職工さんの町で、特に鋳物の町なんです。昔は有名な鋳物工場が密集していて、この辺りのマンションも全部、鋳物工場でした。小学校の同級生の8割くらいは鋳物屋さんの子どもだったんですよ。
:1964年開催の東京オリンピックの聖火台は川口の鋳物屋さんで作られていますからね。吉永小百合さん主演の映画『キューポラのある街』の舞台にもなっています。
ーそうだったんですね。今はあんまりないんですか?
: 鋳物を作るときに煙や煤(すす)が出るので、住宅街ではできなくなってしまったんです。もう、空がグレーになるくらい。だから今はほとんど残っていませんが、なんとなく雰囲気に名残はありますね。
:だから、おしゃれな街ではないんです(笑)
ーなるほど(笑)でも、物価が安くて生活しやすいと聞きました。
: オーケーもあるし、川を越えると東京だし、生活はしやすいと思います。
:オーケーは本当に安いね。
: 駅から近いのもおすすめポイントですね。夏場でも汗をかき始める前に駅に到着しますし、雨の日も濡れる前に駅に着くので、すごくありがたいです。
ー確か、駅から徒歩6分ですよね。便利ですね。
:あと今年中か来年度の頭には、駅前に美術館が開館予定です。今は工事中で少し遠回りになる部分はありますが、駅のすぐそばに文化施設ができるのは良いことだと思います。
ほかにも今年の5月、駅前に「三井ショッピングパーク ららテラス川口」ができました。どんどん便利になっていくので、人の流れもまた大きく変わると思います。
防音室にピアノに、設備が充実。夢のために思いっきり使ってほしい
ーシェアハウスを運営するにあたって、こんな風にしていきたいという理想はありますか?
:アパートのようにただ部屋を貸すのではなく、少しでも社会貢献につながるような、応援する形が良いなという思いがあります。
ー応援?
:例えば、このシェアハウスには防音室があるんです。元々はホームシアターとして使っていたもので、普通の部屋より気を遣わずに練習できます。ピアノもあり、昼間でも時間帯だけ決めてもらったら自由に使って構いません。
:私たちが思いっきり練習できる環境を提供すれば、場所の提供という形で音楽関係の人の活動を応援できると思うんです。だから音楽をやっている人に使ってもらえたら嬉しいですね。
ー素敵ですね。
:私も声楽をしていることもあり、音楽関係の方に有効に部屋を使ってほしい。楽器の音や声量を気にしないで練習できる環境はなかなかありません。
ー楽器が使える物件は少ないので、本当に貴重ですよ。スタジオを借りて練習すると、結構お金がかかりません?
:そうなんです。小さい部屋でも場所によっては2時間で5,000円近くかかります。日常的に練習する人にとって、スタジオ代を気にせず練習できるのはメリットですね。
ー私たちにも「楽器は弾けますか?」と問い合わせがよく来ますからね。練習したい人は意外と多いですし、うれしい環境ですね。
:仮に楽器をやっていなくても、ストレス発散で大声を出したいときなんかも使えますから。テープを持ってくれば歌えるし、カラオケボックスに行かなくてもここなら自由に大声出せます(笑)
:上司の悪口を大声で言いたいときとか(笑)
ーそれも良いですね(笑)
:都心へのアクセスも良く、川口駅から上野駅なんて20分で到着します。家賃も安いから、都内に通学する学生さんにも良いのではないでしょうか。
ーこれから夢を持って挑戦したい人に使ってもらえると良いかもしれませんね。
:私が言語聴覚士なので、医療関係の学生さんにも良いかなと。そういう共通の趣味や目的を持つ人たちが集まって、コミュニケーションが生まれる場になれば嬉しいです。
ータツロウさんは「こうなってほしい」という理想はありますか?
:シェアハウスは仮住まいとして短期間だけ住む方が多いと聞きました。その中で住んでみたら案外良くて、「このままずっと住み続けたい」と思ってもらえるようなシェアハウスになったら良いなと思っています。
短期間だけ我慢して住む家ではなく、ずっといたいと思える居心地の良い家。
ー大事ですね。
:だから例えば、決定権はこの人(康俊さん)が持っているんですが(笑)、備品を買ってほしいなどの要望があったときに「それはみんなにとって良いね」となったらできるだけ応えてあげたいです。
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夢に向かって頑張る人におすすめ。住環境や交流を通してサポートしたい
ーあらためて、どんな人に住んでほしいですか?
:音楽や医療関係などニーズが明確な方。その中で私たちも歓迎するからにはできる限りのことをしてあげたいし、コミュニケーションを取りたいと考えています。だから、私たちとも馬が合えば長く住み続けてほしいですね。
ーひだまりでは運営から、月に4,000円ほど交流会の補助費用を出しているんです。タコパでも何でも構わないので自由に使ってもらって「どうせ4,000円あるなら何かやったほうが良くない?」と、みんなが集まるきっかけになればと思っています。
:良いですね。
ー沖縄の言葉を借りて「ゆんたく」と呼んでいるのですが、おしゃべりや寄り合いといった意味で、そういった機会を作ってほしいという気持ちから作りました。そういう制度も使ってもらうと良いかもしれませんね。
:月に一度レッスンで帰ってくるので、そういうタイミングで利用しても良いかも。
:うんうん。でもだからこそ、心配しているのは「人」なんですよね(笑)。良い人だったらいいなっていう。ゴミの出し方とか、細かいルールをちゃんと守ってくれるかとか。
:この町のごみ捨てルール、細かいんです。缶はスチール缶じゃなくてアルミ缶だけとか、スチール缶は月に2回しかない金属の日に出さないといけないとか。とにかく細かいんです。
ー忘れないように、リビングなんかに掲示したほうが良さそうですね。最初は不都合なことはどうしても出てくると思いますが、運営上で工夫して徐々に改善していく形が良いかなと思います。
:「どんな人が来るか」という点はコントロールできないですし、だからこそ一番の不安要素ではありますが、そういう月に一度のタイミングでパーティーや食事会ができれば、なんとなくその人のことが見えてくるのかなと。その積み重ねですね。
私たちもそうしてみなさんのことを理解していくので、お互いがコミュニケーションを取り合って理解しようとし合える人だと嬉しいです。
全力で応援するから、「良い人」に来てほしい
ーでは最後に、シェアハウスへの思いをひと言お願いします。
:いまは楽しみというか、不安と期待が半分ずつ入り交ざっているところです。
ただ、私も若い頃はフランスに留学したり、仕事で中国に長く滞在したりした経験から、同じ国籍でも良い人もいれば悪い人もいるように、結局「人柄」ということは理解しています。
だからこそ良い人に来てほしいですし、それならいろいろな国の人が来るのも楽しそうだなと思っています(笑)。
ーおもしろそうですね。
:文化の違いに驚くことはあれど、良い人に会ってその違いを知りながら交流するのが楽しい。入居前にある程度面談をして、仕事をしている、勉強しているとか、そういう方々ならそれほど心配はないかなとは思っています。
ータツロウさんはいかがですか?
:ざっくりとしていますが、住民の方同士で仲良くしてほしいなと思っています。
ー間違いないですね。そこがうまくいかないと、ハウス全体がギクシャクしてしまいますから。
:私たちもみなさんが住みやすいようにサポートしますから。物の補充などはね、この人に頼めると思う。バイト代入れるから(笑)
:お手当て出るんですか(笑)
ー(笑)とにかく住人の方が住みやすいよう、サポート・応援しようという気持ちが伝わりました。みなさん、ありがとうございました!
まとめ
青森と群馬を行き来する多拠点生活を送る白坂さん。それぞれが大学教員、カルトナージュ講師、留学経験者と多才な顔を持つ、ユニークな家族です。
シェアハウスを始めるきっかけはお子さんが独立し、広くなった家を持て余すようになったことでしたが、かつてホームシアターだった防音室や、和代さんの声楽の経験などもあり、音楽関係者や音楽の夢を追う若者を応援したいという新たな目標が生まれていました。
「’’短期の仮住まい’’ではなく’’長く住み続けたい’’と思える場所を提供したい」という気持ちから、入居者の方を応援しようとする思いがあらゆる面からにじみ出る、そんなインタビューでした。
物件のある川口市は都心へのアクセスも20分と良く、物価の安さと生活のしやすさが魅力です。シェアハウスは駅から徒歩6分という利便性も大きな強み。
ここに来れば、ひだまり特有の「ゆんたく」を使って入居者や白坂さん一家と息抜きしながら、自分の目標に向かって思いっきり頑張れる環境が持てるかもしれません。
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