「賃貸マンションの退去で高額な費用を請求された……」
と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
賃貸マンションの退去では、主に以下3つのトラブルが報告されています。
・高額な退去費用の請求
・敷金の返却なし
・記憶にない傷や汚れの修繕費用の請求
結論からお伝えすると、基本的に賃貸マンションの退去で高額な費用を支払う必要はありません。自分でジュースをこぼして床にシミが付いたなど、故意に付けた傷や汚れでない限り、私たち入居者が高額な費用を支払う必要はありません。
トラブルにあわせた対策を知っていれば、高額な費用の支払いを避けられるうえに、10万円ほどの敷金が返ってくることが多いです。
そこで今回は、
・退去における「原状回復の義務」とは
・退去でよくあるトラブル事例と対策
・退去で高額な費用を請求されないためのポイント
を解説します。
最後にどうしても解決が難しいときの対処法もお伝えしますので、あわせてチェックしてみてくださいね。
賃貸マンションを退去するとき、入居者には「原状回復義務」がある
よくあるトラブルを紹介する前に、入居者に求められる「原状回復の義務」を簡単に紹介します。
原状回復の義務とは、借りていたマンションをなるべくきれいな状態にして退去する義務のこと。ほとんどの入居者に課されるものであり、不動産会社はこの義務を元に退去費用などを計算することが多いです。
ただし原状回復の義務に、以下のことは含まれません。
・経年劣化による汚れやシミ、傷
・日常生活で破損した床や壁など一部分
・地震など自然災害によって発生した傷
日常生活で破損する部分とは、例えば
・日光が当たったことによるフローリングの色落ち
・壁にポスターを貼ったときの穴や傷
・家具を置いたことによる床のへこみ
・網戸やエアコンの内部汚れ
・エアコンを設置したことによる壁の傷
などです。
これらは誰が住んでもできるものであり、わざと付けたわけではありませんよね。そのため回復の義務は免除されることが多いです。またそもそも修復費用が家賃や敷金に含まれているので、支払う必要はありません。
自分が修復すべきポイントを判別するには、国土交通省の『「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について』(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html)を参考にしましょう。このガイドラインによると、退去までに以下の部分をきれいにしておく必要があります。
・私たち入居者の不注意による傷や汚れ(例:掃除しなくて生えたカビ)
・日常生活で発生したゴミや汚れ(例:キッチンの油汚れ)
上記が責任を追求するラインとなるので、頭に入れておいてください。
次は、退去でよくあるトラブルと対策を紹介しますね。
賃貸マンションの退去でよくあるトラブル1:高額な費用を請求された
1つ目のよくあるトラブルは「高額な清掃費用を請求された」です。
一部の不動産会社は「クリーニング代」などの名前で、何十万円もの費用を請求してくることがあります。多くの人が「長く住んでいたから……」と支払う意思を見せますが、実は必ずしも支払うべきものではありません。
最初にお伝えしたように「原状回復の義務」に含まれていない、日常生活で発生する傷や汚れは、生活しているうえで避けるのが難しいもの。大家さんはもともと支払われていた「敷金」から修繕費用を負担するので、私たちがクリーニング代を支払う必要はないのです。
しかしこのルールを知らないために「仕方ない」と、多くの入居者が高額な費用を支払っているのが現状です。
対策:ハウスクリーニングの特約を確認しておく
対策として、入居前や退去までに「ハウスクリーニングの特約」を確認しておきましょう。
退去のクリーニング代については、賃貸マンションに入居するときの契約内容に記載されていることが多いです。そのため契約書に「退去するときにハウスクリーニング代を支払う」と書かれていなければ、支払う義務はありません。
またハウスクリーニング代を支払うことになっても、金額の相場は家賃1ヶ月分。つまり5万〜10万円であり、それより高い費用を請求されたときは違法である可能性が高いです。
高額な退去費用を請求されたときは、以下の2点を確認しておきましょう。
・退去費用は何に対して支払うのか
・ハウスクリーニングの特約に退去時の支払いについて記載されているか
自分が故意に付けた傷や汚れである場合は、しっかりと費用を支払ってくださいね。
賃貸マンションの退去でよくあるトラブル2:敷金が返ってこなかった
2つ目のよくあるトラブルは「敷金が返ってこなかった」です。
賃貸マンションに入居するとき、初期費用として「敷金・礼金」を支払った記憶はないでしょうか。それぞれの意味は以下の通りです。
・敷金:部屋を退去するとき、原状回復のための費用として支払うもの。デポジット。
・礼金:物件を貸してくれる大家さんに対するお礼金のようなもの。
礼金は大家さんへのお礼なので、返ってくることはありません。しかし敷金は「原状回復」を目的としているので、部屋がきれいであれば使われることはないはずですよね。そのため基本的に敷金は、退去のときに返ってくるお金なのです。
しかし「敷金は返ってくる可能性がある」ことを知らない人が多いために、そのまま回収している不動産会社がほとんど。敷金の相場は家賃1ヶ月分なので、5万〜10万円の大金です。返ってくる方が嬉しいと思う人は多いはずです。
対策:契約書を確認し、ガイドラインを元に話をしてみる
敷金が返ってこないとき、まずは契約書を確認しましょう。実は先ほどお伝えしたように、敷金についても「退去時に敷金を返さない」など、契約の時点で決められていることが多いです。
つまり、契約書に「敷金はハウスクリーニング代として活用する」などと書かれている場合、敷金は返ってきません。ひとつ目で紹介したクリーニング内容をもとに、支払うべきか判断することになります。
契約書に敷金について決まりが書かれていないならば、ひとまず不動産会社に話をしてみましょう。その結果、敷金を全額返してもらえることは多いです。
賃貸マンションの退去でよくあるトラブル3:自分の責任ではない傷や汚れの修繕費用を請求された
3つ目のよくあるトラブルは「自分の責任ではない傷や汚れの修繕費用を請求された」です。
築年数が長い賃貸マンションの場合、前の入居者が付けた傷や汚れが残っていることが少なくありません。
自分が付けた傷や汚れではないので、修繕の義務は発生しないことが多いです。しかし「前の入居者が付けた傷や汚れ」ということが証明できなければ、現在の入居者に請求されることになります。
対策:入居する日に部屋の写真を撮っておく
自分の付けた傷や汚れではないことを証明するには、入居時に部屋の写真を撮っておきましょう。家具や家電を置いていない状態で撮影することで、「入居したときにはこの傷がありました」と証明できます。
特にスマホのカメラで撮影すると、日付も自動的に確認できます。何もない状態で隅々まで写真を撮って、退去まで保存しておきましょう。
自分で解決できないときは消費者センターなどに相談しよう!
ここまで賃貸マンションの退去トラブルと対策を紹介しましたが、どうしても自分では解決できないこともあります。
その場合は、以下のような機関に相談することをおすすめします。
・独立行政法人 国民生活センター(http://www.kokusen.go.jp/):国民生活の安定や向上のための機関。
・消費者センター(http://www.kokusen.go.jp/map/):商品やサービスなど消費生活に関する苦情や問い合わせに対応する機関。全国の都道府県ごとにセンターがある。
上記は専門的な機関、かつ公平な立場で対応してくれます。そのためこちらが不利になることや、大家さんや不動産会社を責め立てて関係が悪くなってしまうこともありません。
自分で解決が難しいトラブルは、上記のような専門機関の力を借りることも検討してみてくださいね。
まとめ 賃貸マンションの退去トラブルは事例と対策を知って防ごう
今回は、賃貸マンションの退去でよくあるトラブル事例と対策を紹介しました。
おさらいすると、退去でよくあるトラブルは以下の3つです。
・高額な費用を請求された
・敷金が返ってこなかった
・自分の責任ではない傷や汚れの修繕費用を請求された
そして対策として、以下の3つをお伝えしました。
・ハウスクリーニングの特約を確認しておく
・契約書を確認し、ガイドラインを元に話をしてみる
・入居する日に部屋の写真を撮っておく
上記のトラブル事例や対策を知っておくことで、不要な退去費用の支払いは避けられるはずです。
賃貸マンションの退去や入居において、「仲介手数料」も分かりにくいと感じる人が多いかと思います。
仲介手数料については以下の記事で解説していますので、あわせてチェックしてみてくださいね。