シェアハウスという共同生活を考えたとき、交流など楽しそうな一面を想像しつつ、どうしても周りに合わせて無理に会話や交流に参加したり、夜な夜なパーティーに付き合わされたりと、ネガティブな面も想像するのではないでしょうか。
もちろん共同生活なのでお互いを尊重し、気遣うことは必要ですが、毎日自分が寝て起きてご飯を食べる場所。無理をしてはせっかくの共同生活を楽しめません。
しかしどのシェアハウスも交流を強制する訳ではなく、お互いのペースや生活リズムを尊重するハウスももちろんあります。
熊本県合志市にあるシェアハウスひだまり「須屋 e-sirase」。管理人であるれいなさんは「自分の生活があっての共同生活だから、個人の意志を尊重できる環境にしたい」と語ります。
れいなさんがそう感じる理由はどこにあるのか?どうやってその価値観が形成されたのか?学生時代や現在のまちづくりのお仕事なども含めて話を聞きました。
シェアハウスに住みたいけれど交流に不安がある、まちづくりやライフデザインに興味があるといった人はぜひ読んでみてください。
ライフデザインを学び、熊本と愛媛でまちづくりに関わるれいなさん
ーれいなさんの経歴や現在のお仕事について教えてください。
:村上黎南(むらかみ・れいな)です。熊本県合志市にある須屋のシェアハウスで管理人をしています。
仕事は合志市のまちづくりに携わる会社で働いています。例えば、観光課の方と連携しながらマルシェなどイベントを開催したり、移動が難しいお年寄り向けに移動販売を提供したり。地域に根ざした活動が中心ですね。
また現在の会社から出向という形で、愛媛県の伊方町のまちづくりにも関わっています。
熊本が地域の人が住みやすいようなまちづくりを行っているのに対して、伊方町は観光業としてのまちづくり。伊方町は山も海もある自然に囲まれたロケーションなのですが、観光地としてはあまり栄えていません。
その地域の魅力を活かしながら観光地として栄えるようなまちづくりを目指しています。月の3分の1くらいは愛媛に行って働いていますね。
ー社会人になるまではどんな学生時代を過ごしていましたか?
:小学校では北海道の田舎に住んで、中学校から大学までは東京の都会で暮らす生活をしていました。
もともとは北海道に住んでいたのですが、親の仕事の関係で引っ越したんです。北海道の田舎の生活から一転、都内の中心エリアで都会的な暮らしになりました。
ー北海道の田舎というとどれくらいですか?
:まず電車は通っていませんでした。線自体が廃線になってしまうくらい田舎で、移動は基本的に車か、1日1本くらいのバスを使って函館に行けるくらい。
コンビニは自転車を走らせればかろうじてありましたが、東京にあるようなおしゃれなカフェは基本的に見当たらない。それくらい田舎でした。
ー中学校から東京で生活して、大学は都内で進学したんですよね。専攻は何でしたか?
:大学時代の専攻はライフデザインです。幅が広いですが、ざっくりとライフスタイルに関わるデザイン全般。インテリア関連も学びましたし、環境・まちづくりも力を入れて勉強していました。
その中でも特にまちづくりを中心としたライフスタイルデザインに興味があったので、アルバイトもNPO関連を選んでいましたね。大学生らしい居酒屋や小売店での販売といったアルバイトもしつつ、学校でもアルバイトでもまちづくりに関わる。そんな学生時代でした。
北海道と東京、それぞれの生活で気付いた自然への想い
ー大学卒業後はどんな仕事をしていたんですか?
:卒業後はアウトドア関連の会社に就職し、キャンプ関連の仕事を担当していました。横浜で1年半くらいと、北海道で1年半くらい勤務して。その後転職して、現在の熊本でのまちづくり関連の仕事をしています。
ーアウトドア関連の仕事に興味を持ったきっかけはありますか?
:北海道と東京という正反対の場所で暮らしたことが大きな影響を与えています。
どちらも好きですが、北海道にいたときはその自然のすごさ、また自分の自然に対する想いに気付いていませんでした。北海道にしか住んだことがなかったし、その自然の豊富さが当たり前すぎて、比較もできなかったので。
でも東京に引っ越して、自分の中で「自然が足りない!」と感じ始めたんです。東京に来てから「どこかに行きたい」「キャンプしたい」という欲が湧き始めて、正反対の都会で暮らしたことで「私は自然が好きなんだ」と気付きました。
だから例えば友達やパートナーと旅行しよう!となったとき、私は都内のきれいな夜景の見える高層ホテルより、どこかの奥地にある秘境を選びたい。そんな想いが学生時代からずっとあります。
そこに大学時代に勉強したまちづくりがあわさって、さらにキャンプにも興味が湧いて勉強するようになりました。
:あと、前職のアウトドア会社がキャンプ場でキャンプのサポートをする仕事だったんです。自分でもキャンプに直接関わるようになって、自然と興味や好きな気持ちが大きくなった形です。
どちらが良い・悪いという話ではなく、幼いときに自然豊かなド田舎に暮らせたのも良かったし、青春時代に都会に暮らせたのも良かったです。どちらも好きで、その両方の経験がいまにつながっています。
ーライフデザインについて勉強したり研究する中で、自分なりのベターなライフスタイルも模索している?
:そうですね。自分なりもそうですが、自分が暮らす上でというよりは、周りの環境や街をより良くするために自分ができることを模索しているという感覚。自分にとって興味のある分野であり、どうにかしたいところなので、その探求が現在のまちづくりの仕事にも繋がっているかなと思います。
ーアウトドア会社で働きながら、プライベートなどでもキャンプを楽しんでいたんですか?
:そうですね、連休を取ってキャンプに行ったりしていました。
ただデイキャンプの場合はお昼に行って夜には帰る分キャンプ時間が短く、なかなか慌ただしいです。だから仕事がキャンプ場な分、出勤でお客さんのキャンプをサポートしながら自分も楽しむ。そうやってキャンプに関わっていることが多かったです。
シェアハウスに住もうと思ったきっかけは転職による熊本への転勤
ー熊本やシェアハウスに住もうと思ったきっかけは何かありますか?
:熊本は単純に転職したことがきっかけです。ちょうど自分がやりたいことをしているまちづくりの会社があって、その所在地が偶然熊本でした。
でもやっぱり熊本に引っ越す上で不安はあって、最初は迷っていたんです。「友達も知り合いもいない中で転職して大丈夫かな」と悩んでいるときに、検索でひだまりのシェアハウスをたまたま見つけました。
もちろん転職のタイミングもありましたけれど、熊本のシェアハウスを見つけたタイミングで「よし、これで行ける!」と思って。シェアハウスの存在が転職の背中も押してくれました。
ーシェアハウスという暮らし方はそもそも知っていました?東京にはたくさんあるので、存在自体は知っていそうですが。
:はい、東京にもありました。というか、社会人1年目のときにシェアハウスに住んでいました。東京とか横浜とか、特に東京ではいろいろなシェアハウスを転々としていたんです。
ーそうだったんですね!じゃあシェアハウスでの生活に対して、イメージはあったんですね。
:なんとなくは分かっていました。
ただ東京で住んでいたシェアハウスは起業家シェアハウスというコンセプト。運営者も起業家、住人も起業家もしくは起業を目指している人で、それこそスタートアップのような、同世代の20代が立ち上げたシェアハウスでした。
須屋のシェアハウスとはまた雰囲気が違って、いろいろなシェアハウスがあるんだなと思いましたね。
シェアハウスにはどんな人が来てほしい?
ーれいなさんは須屋のシェアハウスでは管理人をしていますよね。住人とはまた違う形でシェアハウスのことを考えたり、運営面にも携わったりしていますが、どんな人と一緒に生活できたらいいですか?
:せっかくの共同生活なので、一緒にごはん食べたりどこかに出かけたりする場所であり関係性になれたらいいなとは思います。
ただそれを強制するつもりはありません。例えば「みんなでどこか出かけよう」となったときに「私は今日は不参加で」という人がいても良い。
インドアな方でもアウトドアな方でも良いですし、一緒に何かをすることにこだわりはありません。
何よりも、自分の生活があった上での共同生活。「みんなで集まってワイワイ」を普段から毎回する必要はなく、「個人の意志を尊重できる環境にしたい」という想いがあります。
だからこんな人に来てほしいという理想像もなく、本当にどんな人でも来てほしい。強いて言うなら、シェアハウスが初めての人でも気を使わないよう、みんなが自分の生活を尊重して自由に住めたら良いですね。
ー須屋は生活環境も良いので、生活自体に不便もなさそうですよね。
:スーパーやコンビニにすぐ行ける立地なのに、シェアハウス自体は国道から少し入っている分騒音なども気になりません。
雰囲気もめちゃくちゃ気に入っています。ジムなんかも近場にあるし、すごい便利ですよ。
これからやりたいことやシェアホスト業務での心がけ
ーれいなさんには須屋のシェアハウスのInstagramも更新してもらっていますが、写真撮影は好きですか?
:はい、好きです!
どうやったらシェアハウスの魅力が伝わるか、どんな写真を載せたら良いのか、模索中です。
ー写真は勉強したんですか?
:勉強はしていません。ただ周りに仕事として取り組んでいる人がいたり、趣味で楽しんでいる人もいたりして、勉強はしていないけれど一緒に出かけたら教えてもらえる環境にいました。
ー写真のスキルは今後も役立ちそうですね。音楽も好きですか?
:演奏など本当に好きでのめり込んでいる人ほどではないですが(笑)、音楽は自分の生活に欠かせない存在です。
仕事で愛媛に行くときは基本的に車を使うのですが、4時間くらいかかるんです。その道中ずっと音楽を聴いていて。
最近、これはもっと楽しみたいなと思い、DJ機材を買いました(笑)。
ー機材?!
:機材といっても持ち運べるくらいコンパクトで、少しミックスするくらいですが。機材を買ってしまうくらい音楽が好きではあります。
ーなかなかそこまで買う人はいないですよね。音楽はまちづくりでも活用しようとか考えているんですか?
:会社としては分からなくて、どちらかというと自分の趣味や遊びですね。
でも熊本に来ておもしろいつながりができたので、自分の会社のイベントとは別に友達と「イベントを開催できたらいいね」と話しています。
仕事にはつながらないかもしれませんが、私有地をつかって身内パーティーみたいなことはやろうと思ったり。
ー良いですね。ひだまりでもコロナ前に過去に音楽イベントをやったことがあるので、機会があればお願いします(笑)。
自分の生活があった上での共同生活を
今回は須屋のシェアハウスに住みながら、管理人も担当するれいなさんにお話を聞きました。
シェアハウスというと顔を合わせたら必ず会話をしたり、パーティーがあったらなるべく参加したりと、どうしても周りに合わせる場面が多いとイメージするかと思います。
しかし住人それぞれにも仕事や友達付き合いなど生活があり、ちょっと気乗りしないときもあるかもしれません。もちろん交流は楽しいことも多いですが、そうやって無理をしても楽しめないもの。
自分の生活を大事にしながら人と暮らす。それこそ共同生活に必要なことなのかも、と感じました。
またインタビューではれいなさんがハキハキと楽しそうに仕事や生活、大好きなキャンプについて話す姿から、毎日を楽しんでいる様子も見えました。
れいなさんがそうやって自分の好きなものを大事にしながら生活しているからこそ、他人のペースや共同生活の楽しみ方も尊重したいと思えるのかもしれません。
熊本県の合志市にあるシェアハウスひだまり「須屋」は現在も住人を募集中です。
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