「空き家を所有しているけれど、何か問題が起きたらどうしたらいいんだろう…」
と悩む方は、多いのではないでしょうか。
空き家を所有していること自体に、問題はありません。ただし空き家を所有すると、管理・手入れ、固定資産税の支払いなど新たな義務が発生します。
両親の持ち家など遠方にある空き家でも、何らかの対策を取らないと、以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
・雑草の放置などが近隣トラブルにつながる
・ごみの不法投棄などに使われてしまう
・ネズミや野良猫などが住みつき、悪臭が発生する
上記のようなトラブルを防ぐためにも、空き家が増加する原因や対策を知っておきましょう。加えて、空き家を賃貸物件やシェアハウスにリフォームすることで、新たな収入源が生まれることもあります。
そこで今回は、
・空き家問題の現状や数
・空き家問題が起こる原因
・空き家の問題点
・空き家問題への対策
・空き家活用の効果
を紹介します。
今回の記事を参考にしながら、空き家の有効活用を一緒に考えていきましょう。
記事内のデータは、国土交通省が調査している以下2つから抜粋しています。
・「空き家の現状と課題(https://www.mlit.go.jp/common/001125948.pdf)」
・「令和元年空き家所有者実態調査 集計結果(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001378475.pdf)」
気になる方は、あわせて参考にしてみてください。
空き家問題の定義や空き家の意味とは?
結論からお伝えすると、空き家問題とは「誰も住んでいない住居が放置され、景観上や犯罪などの問題が発生すること」です。
そのためにも、空き家の定義や数を把握していきましょう。
空き家とは、「1年以上人が住んでいない物件」であり、以下の4つにわけることができます。
【賃貸用住宅】
人に貸すために用意されているマンションやアパート。新築や中古は問わない。
【売却用住宅】
売却のために残されている住宅。新築や中古は問わない。
【二次的住宅】
特定の日時や場面で使用する住宅。寝泊まりのための「セカンドハウス」や「別荘」といわれることもある。
【その他】
何らかの理由で誰も住んでいない、売却や賃貸もされていない住宅。長期的に不在。
今回の記事では「その他」を空き家として、解説します。
空き家問題の現状:「その他」の住宅が5年で1.5倍に増加
ここからは、国土交通省の「空き家の現状と課題」を参考に空き家問題の現状を見ていきましょう。
まず全国には、種類を問わず約820万戸の空き家が存在し、全体の空き家率は13.5%です。
内訳は、以下の通り。
・賃借用:約429万戸
・売却用:約31万戸
・二次的:約40万戸
・その他:約318万戸
空き家の中でも、増加率は以下のように異なります。
【賃貸用または売却用】
・2008年:448万戸
・2013年:460万戸
賃貸・売却の増加率は1.16倍とゆるやか。増えてはいるものの、それほど多くはありません。
【その他】
・2008年:268万戸
・2013年:318万戸
対して、賃貸も売却もされていない「その他」の空き家の増加率は1.5倍。空き家全体の3分の1(39%)と、高い割合を占めています。
そして空き家は東京など首都圏より、地方に多い傾向です。
全国の中でも、空き家の多い地域は以下の3つ。
【平均的に空き家の多い都道府県(全国平均13.5%)】
・山梨県:22.0%
・長野県:19.8%
・和歌山県:18.1%
【「その他」の空き家が多い都道府県(全国平均5.3%)】
・鹿児島県:11.0%
・高知県:10.6%
・奈良県:10.1%
この3県は、空き家の割合が10%を超えています。
このように全国的に空き家が増えており、特に地方に集中しているようです。
空き家問題の現状:腐朽・破損している住宅が55%
続いては、国土交通省の「空き家所有者実態調査」の集計結果を見ていきましょう。
先ほど紹介した空き家の状態を見ると、以下の結果が明らかになりました。
【腐朽・破損している住宅の割合】
・屋根の変形や柱の傾きなどが生じている:22.4%
・住宅の外回りや室内に全体的に腐朽・破損がある:0.7%
・住宅の外回りや室内に部分的に腐朽・破損がある:31.6%
・腐朽・破損なし:39.2%
・不詳:6.1%
また管理頻度は、以下の通りです。
【管理頻度(利用状況別)】
・ほぼ毎日:15.5%
・週に1〜数回:19.1%
・月に1〜数回:36.4%
・年に1〜数回:24.7%
・不詳:4.3%
もっとも多いのが「月に1〜数回」。また「年に1〜数回」と回答した人も多く、ほとんどの人が頻繁に訪問できているわけではありません。
空き家が増えているものの、「管理に人手が不足している」というのが現状でしょう。
ここまで日本の空き家問題の現状を紹介しました。
いったいなぜ空き家はここまで増え続けているのでしょうか。次で詳しい原因を解説します。
空き家が増加している原因3つ
空き家が増加する原因は、主に以下の3つです。
・居住者の高齢化、死亡、引っ越し
・突然の相続による放置
・新築の人気、中古住宅の売れにくさ
1つずつ見ていきましょう。
空き家問題につながる原因1:居住者の高齢化
居住者(所有者)が高齢ゆえに、空き家になったケースです。
高齢化によって空き家を手放す理由は、具体的に以下の3つ。
・子どもとの同居のための首都圏への引っ越し
・老人ホームなど施設への転居
・病気による長期入院
高齢になると、子どもとの同居や老人ホームへの入居によって、自宅を離れることが多いです。長期的な引っ越しのため、もとの家に戻ることはほとんどありません。
所有者が引っ越し先で亡くなったことで、そのまま放置されることも多いです。
また住人が死亡や引っ越しで不在の空き家は、確認を取ることも難しいのが現状。自治体などは「売却する」「賃貸」にするなどの意思を確認できないため、空き家として残り続けます。
空き家問題につながる原因2:突然の相続による放置
親の持ち家を相続したものの、そのまま放置されるケースも多いです。
昔は多くの家庭で「親と子が一緒に住む」という生活スタイルが一般的でした。
しかし近年はライフスタイルの変化により、二世帯住宅など親子で一緒に住むことは少ないです。また子どもはすでに家を所有しているため、親の住宅は必要ありません。
相続しても固定資産税などが発生する、会社から遠いなどの理由から、「あえて相続しない」ことを選ぶ人も。手続きすらも放置されることがあります。
この場合は取り壊しをすすめられますが、子供の頃に住んでいた実家の取り壊しを決断できない人も多いです。
その結果、二次利用や取り壊しもせず、空き家として放置される傾向です。
空き家問題につながる原因3:新築住宅のニーズの高さ
新築住宅の人気が高いゆえに、空き家など中古住宅が放置されることも多いです。
日本では30〜40代になると、マイホームを購入する人が多いのではないでしょうか。そしてマイホームは基本的に、新築であるかと思います。
多くの人が新築のマイホームを選ぶ理由は「新築物件への優遇率の高さ」。
というのも新築住宅は、住宅ローンの控除などを受けられることがあります。また希望の住宅デザインにできることから、日本では特に新築が人気です。
また地方では物価が安いため、新築物件を建てるハードルがそれほど高くありません。「価格が変わらないなら」と新築を選ぶ人が多く、中古住宅は空き家として活用されないままです。
ここまで空き家問題が増加する原因を解説しましたが、「放置しても問題ないのでは?」と思う人も多いのではないでしょうか。
空き家は放置すると、人間関係や景観などさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。次で詳しく解説しますね。
空き家の問題点:景観上や近隣とのトラブルが起こる
空き家の増加や放置は、以下のような問題の原因となりやすいです。
【持ち主への不利益】
・住宅自体の価値が下がり、売却が難しくなる
・雑草の放置などが近隣トラブルにつながる
・ごみの不法投棄などに使われてしまう
空き家は木造が多いため、換気など手入れをしないと、老朽化が早いです。価値が下がるうえに、地震や台風で倒壊するリスクも高まります。
【周囲への被害】
・不法侵入や不法投棄により、犯罪の温床となりやすい
・倒壊や落雪などにより、ケガをする可能性がある
・ネズミや野良猫などが住みつき、悪臭などが発生する
空き家は放置されていると、雑草などで「誰もいないこと」がひと目でわかります。犯罪者が住処にする、連れ去りなど事件が起きても気づきにくいなど、犯罪の温床になりかねません。
また放火などのターゲットにもされやすく、周辺まで火事の被害がおよぶ可能性もあります。
【地域の機会損失】
・築年数が経っている、手入れの行き届いていない空き家が景観を損なう
・土地と建物が活用できず、エリアの資産価値が下がる
・治安悪化などによって、地域の人口が減少する
空き家率が30%を超えると、地域の財政が破綻するといわれています。なぜなら人口が減ることで、市民1人あたりにおける税金の負担額が増えるためです。
また単純に犯罪の温床となることで治安が悪化し、エリアの魅力が下がることも。移住者などが減少し、地域の過疎化が進んでしまいます。
ここまで紹介したような空き家問題には、いくつかの対策があります。空き家を放置せずに活用することで、移住者の増加など地域活性化につながることも期待できるでしょう。
まずは次で、政府の対策を紹介しますね。
空き家問題の現状に対する政府の対策
まず空き家問題の現状を少しでもよくするために、政府は2014年11月に「空き家対策の推進に関する特別措置法」を定めました。
内容は以下です。
・空き家に関する施策の策定、協議会の設置
・空き家の実態調査
・特定空き家への修繕、伐採などの措置の助言または指導、勧告、命令
・空き家に関する施策への費用補助、地方交付税制度の拡充
まず空き家の人の出入り、水道・電気・ガスの使用状況から居住者の有無を確認します。
実はこの法律ができるまでは、所有者の許可なしで空き家に入ることはできませんでした。法律によって立ち入りできるようになり、放置されている空き家への措置が取りやすくなっています。
【出典】国土交通省「空き家対策の推進に関する特別措置法」
https://www.mlit.go.jp/common/001080534.pdf
空き家問題を解決に導く4つの対策
続いては、自分たちで取り組める空き家問題への対策を紹介します。
空き家問題には、以下の対策が効果的です。
・住宅を解体し、土地を売却する
・空き家管理サービスを活用する
・空き家バンクなどを活用して売却する
・リフォームして賃貸物件・シェアハウス・民泊にする
もっとも多いのは「売却」。空き家の管理に加えて税金の支払いなどの義務もなくなるため、選ばれやすいです。
その他にもシェアハウスなど、新たな用途を持った物件にリフォームするのもおすすめ。空き家を有効活用できるうえに、新たな収入源となる可能性もあるためです。
実際に国土交通省の「空き家所有者実態調査」から空き家の立地を見ると、以下のように利便性が高いです。
【最寄りの鉄道駅からの距離】
・200m未満:4.1%
・200〜500m未満:12.9%
・500〜1000m未満:20.7%
・1000〜2000m未満:21.5%
・2000m以上:39.9%
・不詳:0.9%
上記のうち、駅から1km以内に位置する空き家は約37.7%。立地のよい空き家が多いため、生活しやすいことがアピールポイトになり、入居や滞在につながることも少なくありません。
空き家を有効活用する対策について、詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
空き家問題の対策が、地域活性化につながる
ここまで空き家問題の現状と対策をお伝えしましたが、上記を続けることで地方自治体は「地域活性化」が期待できます。
地方の人口減少の解決策となるのは、主に以下の3つです。
・移住者の受け入れ先として提供する
・アパート経営をする
・シェアハウスにリフォームする
実際に先ほどの国土交通省のデータでも、空き家の利用意向として以下がありました。
・寄付・贈与:1.3%
・賃貸:5.3%
・住む:7.0%
・売却:17.3%
・セカンドハウスなどに利用:18.1%
・空き家にしておく:28.0%
まだまだ現状維持が多いものの、賃貸やセカンドハウスなどの利用を検討している人も多いです。
特に新型コロナによるテレワークの導入などで、地方移住を検討する人が増えています。空き家をリフォームした賃貸物件を用意しておくことで、空き家所有者は新たな収入源を得ることが可能です。
特にシェアハウスは、入居者の移住ハードルが下がるのでおすすめ。実際にシェアハウスオーナーになる空き家所有者も増えています。
シェアハウスオーナーの仕事について、詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
まとめ 空き家問題はシェアハウスや民泊にすることで解決できる
今回は、空き家問題の現状や課題について解説しました。
おさらいすると、日本の空き家はこの20年間で急激に増加しています。
空き家が増加する理由は、主に以下の3つ。
・居住者の高齢化、死亡、引っ越し
・突然の相続による放置
・新築の人気、中古住宅の売れにくさ
空き家は放置していると、近隣トラブルや景観上の問題につながります。突然の相続などでも相続者の責任が問われるため、あらかじめリフォームなど対策を考えておきたいところです。
今回紹介した中でも、「賃貸物件として貸し出すこと」はおすすめ。特にシェアハウスは入居者のハードルが低いため、空き家を有効活用しやすい方法の1つです。
シェアハウスひだまりでは、空き家オーナーなどのシェアハウス運営をサポートする「シェアホスト制度」を提供しています。
シェアホスト制度を活用することで、長年シェアハウス運営に携わる僕たちと協力しながら、空き家をリフォームなどで生まれ変わらせることが可能です。
詳しくは、以下の記事を参考にしてみてください。