(Illustrated by shunshun)
東京都練馬区にある青豆ハウスを運営されている青木純さんにインタビューさせて頂きました。青木純さんは、「人が主役」と書いて「住む」という考えのもと、「人が主役」になるような青豆ハウスやROYAL ANNEXという賃貸マンションを行われています。また、賃貸住宅界に新しい風を送るイノベーターでもあると僕は思っています。
ー なんでシェアハウスをしようと思ったんですか?
もともとシェア住居は単身者向けのもが多いですよね。楽しいシェア暮らしをして、そこでパートナーと出会っても、みんな卒業しちゃうんですよね。せっかくシェアですごい楽しい暮らしをしていたのに、シェアを卒業した後の住まいの選択肢は普通の賃貸マンションになってしまうというギャップが世の中にあったので、自分が「シェアの次を作らないといけない」と思いました。また、それをちゃんとデザインしたいと思ったのがきっかけです。
ー だから、青豆ハウスでは二人から入居可能にしていたんですね!
そう!お問い合わせでは友達同士で入居したいというものも結構来たんですが、そこは正直すごい悩みました。女性同士の二人組みでもいいかな?と、、それで色々考えたんですが、8世帯なので足並みを揃えていたほうが、お互いに気持ちいいだろうと、
そして、お互いに無理がないだろうと思い、今みたいな入居条件にしています。
ー 青豆ハウスでは「育つ」というワードをよく見るんですが、それはなぜですか?
それは今までの賃貸住宅だと、ただ時間を消費する感じがします。賃貸住宅に入ることが決まって、2年間の契約に向かって、なんとなく暮らしていって、壁紙が薄汚れていって、出ていくとリセットされてしまう。。。。そして、記憶も含めて、、、、
なので、今までの賃貸住宅は時間を消費してリセットするサイクルを繰り返すだけのものでしてた。
だけど、それでは楽しくないと思います。住んでいる人の成長と共に空間そのものが育っていく。時間の蓄積が価値へと変わる賃貸住宅のほうが自然だし、楽しいんじゃないかなと。 「育つ賃貸住宅」とはそんな想いから生まれたコンセプトです。もちろん空間だけじゃなく、隣近所や街との関係も育って深まっていくというのが理想です。
ー 青木さんがTED✕Tokyo2014で話された時に「人が主役」というキーワードを出されていました。そういった考えを持つきっかけはどこから来たんですか?
僕がこの青豆ハウスを作る前からやっている「ROYAL ANNEX」という賃貸住宅というものがあります。東京・豊島区にある築25年超の中古マンションです。
スペック的には良くも悪くも「普通」の賃貸マンション。これといった個性がないので築年数が経過すると市場では選ばれにくくなります。なので市場競争力を高めるためにはリノベーションなどによる商品の再構成が必要になってくるのですが、ぼくはパートナーに住人を選びました。
住人と壁紙や、間取り空間を選んだりとか、一緒にやっているうちにその人の個性が発揮されればされるほど、空間がよくなっていくのを目の当たりにしました。僕自身も何人もの住人と空間を作っていくことによって、より楽しくもなっていったし、より経験も積めたし、よりいいものが作れました。だから、人を主役にすると住宅って魅力的なんですよね。
ー シェアハウスをするにあたって苦労したことってありますか?
やっぱり新築でやるというのがね。新しい場所に一斉に人を集めるっていうのが怖かったです。なので、プロセスを大事にしました。情報と体験をしっかりデザインする。建築当初から「そらと豆」という成長日記ブログを書いて、関心をもってくれた人たちにじわじわと理解を深めていく。
→BLOG 「そらと豆」
建築中にも何度かイベントを開いて、青豆ハウスがどんな場になるのか体験してもらいました。極めつけは新築なんだけども、前述のROYAL ANNEX同様、内装に関しては住人と一緒に仕上げるということを、青豆ハウスでチャレンジしました。これ、完成前に入居者が全て決まってないと不可能だし、出来上がってないものを前に決断してもらうってのは大変な苦労でした(笑)ここまで大胆に挑戦して大丈夫なのか?という不安が圧倒的に大きかったです。
でも、内装を選びに行く時にはなんとか全部入居者が決まって、みんなで足並みを揃えて始めることができました。一緒に選びにいったアイテムで、一緒に仕上げる。すべての取り組みが新しいことばかりだったので、すごい不安だったんですが、得るものもすごい大きかったです。こういったプロセスを踏んでいるからこそ、今の青豆ハウスのコミュニティーもすごい豊かに育っているんじゃないかと思います。
ー シェアハウスを運営するにあたって注意していることとかってありますか?
僕がみんなに言っていることは、「無理をしない」「気負わない」「楽しむ」ってことです。そして、この三つのキーワードは絶対忘れないようにしようと思っています。やっぱり無理をした瞬間に「滅びが生まれる」。気負った瞬間に「誰かが疲れる」。
で、何をするにしても「第一に楽しむためやる」必要があると思います。
例えば、まちに開くイベントをするときも、いきなり自分たちサイズじゃないことをしないのが大切だと思います。今年の夏に「あおま(め)つり」というものをしたんですが、あまり人を集めすぎると自分たちが楽しめないと思い、まずは自分たちのためにやろうということで、この祭りを開催しました。
おかげでとても良いものになりました。自分たちの友達と、これを作った人たちと、あとはまちのご近所さんで顔見知りになった人達に来てもらうという形でしたんですが、結果的に100人くらいの方が来られました。
ー 入居者とオーナーの距離感で悩んでいる方が結構いたんですが、青木さんが大切にしている、入居者とオーナーの距離感ってありますか?
それでいうと、「悩まない」ということです。やっぱり悩むと問題に思えてくると思います。なので、悩む前にちっちゃなことであっても、みんなとコミュニケーションを取るということが重要だと思います。僕が青豆ハウスに住むというのを決めたのも実はその距離感を大事にしたいという想いからなんです。
たとえば、なにか問題が起きて電話とかかかってくると、やっぱり必要以上に不安になります。でも、そこに住んでいて、声をかけられると、ナチュラルに対応できます。今では距離感近すぎるので(笑)「あっ!大家さんだったんだ!」という関係性です。
ー 青豆ハウスのルールとかってあるんですか?
一応、「暮らしの手引き」みたいなのは作りました。管理規約と聞くと重く感じませんか?なので、「暮らしの手引き」にしています。この暮らしの手引きは「こんな風にしたら、こんな風になれるよ。」みたいなのを載っけています。そして、これは押し付けではありません。また、このなかにはみんなで考えたルールなんかもあります。
例えば、玄関も夜中に開けっ放しにしていたら、みんな寝ているから、夜の8時から朝の8時までは自然と帰ってきた人が閉めるようにしようというのを住人発案で載っけていたりしています。自分達が楽しむために作っているルールなんですが、結果的にそれがみんなへの思いやりになっているという感じになっています。
ー 青木さんが思う「シェア」の良さってなんだと思いますか?
それは「楽しさ」です。一人暮らしや、家族だけの暮らしでは楽しみの幅が閉ざされてしまうと思います。だけども、そこにいろんな人が交わることによって楽しさが膨れ上がります。例えば、ご飯にいくときもそうだと思います。一人でご飯を食べるよりも、大勢でご飯を食べたほうがご飯がより美味しく感じたりします。それと一緒です。
あと、みんなと暮らすことによって得られる「ベネフィット」があります。たとえば、便利さです。調味料が足りなかったり、器が足りないときに周りから借りることができます。他にも時間の使い方として自分の子供の面倒を見てもらうことができたり、ほかにも旅行中に猫に餌をあげてもらったりとか、植物の水やりもお互いにしたりとかできます。主にこの二つかな?
でも、楽しさの方が勝っていますけど。
ー 青豆ハウスを作るときに注意したことってなんですか?
それは余白をデザインすることです。それが一番です。みんなに仕上げてもらった内装や、大胆にとったコミュニティースペースも余白だし、ウッドデッキのちょっとした段差だったり、建物からのところどころから出ている丸カンも僕らなりの余白。
こんな風に自発性を促すような仕掛けを大切にしています。やっぱり作りすぎないことって本当に大切だと思います。
ー これからの青木さんの目標ってなんですか?
「部屋作りから始まる、まちづくり」かな。暮らしの舞台として、部屋って一番小さな単位ですよね。どこに住むかよりどんな暮らし方をしたいかで部屋選びをするから、まちに先入観がないんですよね。部屋に愛着が湧いて、その部屋がある建物に愛着が湧いて、まちに愛着が湧く。自分たちの暮らしをもっと楽しむために、まちをもっと楽しくする。「欲しい」と思う暮らしを、それぞれが自分たちで作り上げていくような循環を作っていくことが重要だと思います。
例えば、ここに住んでいる住人がカフェが欲しくなって、自分でカフェはじめたり。そんなことが普通になるとますます楽しいことになっていくと思います。こんな風に豊かさをどんどん追求していくことが僕の目標です。
ただ、僕自身も気負わず楽しみ続けていくことを第一にしていきたいと思っています。
忙しい中時間を作っていただきありがとうございました。ホント普通では聞くことができないお話をお聞きすることができました。実際に僕がこの青豆ハウスを訪れて印象的なこととして、この青豆ハウスは『住む場所を選び終わっても楽しみがある』ということを一番感じさせていただきました。住むまでにも、自分の好きなようにカスタマイズ出来たり、自分の好きな空間を作ることができます。しかし、それだけに限らず、住み始めても住んでいる人を飽きさせない様々な工夫が施されていました。
その新しい発見もこの青豆ハウスに住んでいるからこそ、発見できるものばかりです。また、今までにない新しい暮らしとして注目したい事例だと思います。ぜひ一度、この青豆ハウスに遊びに行っていただきたいと思います。以上。中原でした。